時間軸から考える相続対策
相続・不動産担当のエフピーコンパスの平井です。
ファイナンシャル・プランナーとして、相続の相談を受けるときに考えていただきたいのが、時間軸です。今回は、この時間軸についての考え方について、少し整理をしてみたいと思っています。
ファイナンシャル・プランナーは、お客様の夢を具体化して実現させるために、結婚やマイホームの購入、子供の教育費や海外旅行、老後の生活など、将来にかなえたい夢を聞いて、その夢をかなえるために、将来をじっくり見据えたライフプランを作成します。
その夢の実現に必要な時期と金額をキャッシュフロー表に整理を行い、今後のお金の流れを確認し、年間の収支や預貯金の残高を確認する事で、問題点を明確にして、対応策を考えます。漠然と考えていた将来に必要なお金や解決すべき問題点が目に見えるようになり、問題解決に向けて、ファイナンシャル・プランナーと一緒に、具体的に対応していく事になります。
相続のご相談の場合、お客さまと相続の話をしていても、「相続というと、まだまだ先の話なので考える気持ちはない」「この前に相続が終わったので、今は相続の心配をしていない」「子供たちは仲が良いので心配していない」など、お客様はまだ問題が具体的に起こっていない時点では、ついつい先延ばしにされます。
実際に、相続が発生すると、あわてて手続きの方法や、遺産分割、相続税の申告等について調べたりするのですが、発生する前は、あまり気にしていない方が多いのが実情です。
是非お客様にお話ししていただきたいのが、この時間軸から考える相続税対策の考え方です。人は必ず亡くなりますので、どこかで相続が発生します。相続発生の時期から逆算して、その時間に合わせた対策を行う事で円満な相続につなげることが出来るということを伝えていただきたいのです。
つまり、相続というのは、どこが始まりというのではなく、気が付いたところが相続対策の始まりなのだと私は考えています。
参考として、私がセミナー等で使用している図を載せておきます。
ファイナンシャル・プランナーとして、お客様に相続について考えていただけるために、相続発生までの対策を時間軸に整理をして流れを理解いただいて、実際に相続対策を初めていただく事が重要になります。
大きく分けると、以下の4つの時期に分類することができます。
① 相続まで時間がある。
② 相続発生まで数年(高齢である、病気等が見つかった)
③ 相続発生してからの手続き
④ 相続税申告後
細かいところは、また別の機会にお話をさせていただきますが、簡単に整理をすると
① 相続まで時間がある時期
まず、財産と相続人を把握して、相続税対策が必要かどうか、遺言書の作成が必要か等を考えます。生命保険等も、元気なうちに対策を立てておくことがまず重要ですね。
実際に相続発生までに時間がありますので、実際の効果の出るには時間のかかる生前贈与による対策や不動産の有効活用による対策については、方針を明確にして、始める必要があります。
大事なことは、時間を味方につけることです。
② 相続発生まで数年(高齢である、病気等が見つかった)
高齢になったり、体調が悪くなったりと、相続の発生まであまり時間がない場合は、遺言書の作成や生命保険の活用等、すぐに効果の出る対策が必要になります。不動産の有効活用の場合、新しく建物を建てるのではなく、中古の物件を購入するなど、即効性のある対策を考えることになります。
③ 相続発生後
やはり、誰に相談するのかという事が大切です。ファイナンシャル・プランナーとしては、お客様の横に座ってご家族のお話をきちんと聞いて、必要に応じた専門家と一緒に手続きを行う事になります。特に資産の総額が多い場合は、資産税の専門の税理士さんと一緒に動くことが大切です。私の場合は、NPO法人相続トータルサポート関西というチームを作り、相続の専門家が集まった形で、具体的な手続き等については、対応しています。
④ 相続税申告後
お客様からすると、相続税の申告が終わったので、相続の心配はないと考えますが、実際には、税務調査の問題や相続税の更生の請求等があります。土地の評価については、税理士の先生によっては、評価が間違っていることもありますので、相続税の申告書を見直すことによって、税金が戻ってくることなどのお話をすることも大切になります。
つまり、相続についてもライフプランについて考える事と同様に、相続発生から逆算して、時間軸について考える事が大切です。少額でも積立を若いころから行っていると、きちんとお金が貯まっていくのと同様に、相続についても、上手く時間を活かして、毎年贈与を続けていく、所有している不動産の境界を確定しておくなどの対策を行っておくことです。相続対策といっても、お金、保険、不動産、遺言、信託等、多くの方法がありますので、時間軸を考えて、出来るだけリスクや負担の少ないものから始めていく事も大切です。
相続については、気づいたが始まりだと言いましたが、一番良いのは①相続発生まで時間がある時に、お客さまから信頼いただいて、じっくり相続対策を一緒に考えていく事が相続対策や遺言等の準備が出来、円満な相続に繋がります。実際には、①の場合よりも、②、③の時期の相談が多いのですが、その時の相談をきちんと行い相談に応えることで、相談を受けた相続の手続きが完了しても、その次の相続の始まりになりますので、まずお客様に時間軸で相続について考えていただく事が重要かと思います。
最後に時間軸のお話をして、相続対策の方法のお話をする中で大切なことは、相続対策を行うためには、意思能力が必要であるという事です。遺言を書きたい、贈与をしたいと思っていても、認知症になってしまい、意思能力が無くなると有効な対策を行う事が出来なくなります。お客様に、相続について時間軸を含めて理解いただき、元気なうちに出来るところから対策を初めていただければと思います。
ファイナンシャル・プランナーとして、相談や実務を行う中で、自分の引き出しを増やし、お客様にとって必要なネットワークを更に広げていきましょう。