相続発生後の相続対策
相続・不動産担当のエフピーコンパスの平井です。
相続・不動産のブログの中で、ファイナンシャル・プランナーとして相続に携わっていく中で、時間軸を考えて、対応することが大切なことを整理させていただきました。
整理すると、大きく分けると、以下の4つの時期に分類することができます。
① 相続まで時間がある。
② 相続発生まで数年(高齢である、病気等が見つかった)
③ 相続発生してからの手続き
④ 相続税申告後
今回は、③の相続発生してからの相続対策についてのお話しです。
相続で、一番大切なことは、相続人の皆さんが亡くなられた方の事を偲び、遺された大切な財産をきちんと引き継ぐことだと思っています。そのために、ファイナンシャル・プランナーの役割は、皆さんに正しく手続きの流れを理解いただき、相続人全員が納得した遺産分割協議、相続税の申告等を行うこと、お客様と一緒に実行支援することです。
その時に重要なことを少し整理してみます。
まず、相続手続き、遺産分割協議、税務申告等の作業のキーマンになる人が誰かを把握して、その人を中心に、各相続人の意見を聞くことになります。キーマンは、配偶者がなる場合も多いですが、高齢の方の相続になると、ご長男さんや、お母さんの近くに住んでいた子供さんが行う事が多いのが実情です。ただし、きょうだいの仲で声の大きい人や、他のきょうだいと考え方の異なる方もおられますので、相談者からのお話だけを信じるのではなく、中立的な立場で、話や考え方を聞いて、判断することが重要です。ファイナンシャル・プランナーの役割は、各相続人の考え方や価値観を理解し、第三者の立場でコンサルティングを行い、専門家と一緒に円満な相続を実現する事です。キーマンを中心として相続手続、申告を行いますが、時には他の相続人の立場や亡くなられた被相続人の想いを、第三者として伝えることが大切です。
相続放棄、限定承認は、相続人であることを知った日から3カ月以内ですので、その間にプラスの財産だけでなく、借金等のマイナスの財産についても調べることが重要になります。一番良いのは、相続発生前に一度財産目録を作成して、保有している不動産の一覧や金融資産の一覧を作成しておくことが大切になります。
相続税の申告や金融機関の名義変更、不動産の相続登記に必要な、相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本、原戸籍、除籍謄本等を収集することです。基本的には、現在の戸籍からさかのぼっていく事になります。市役所の担当の方にきちんと伝えると、その市役所の前はどこの市町村の戸籍になるかを詳しく教えていただけますので、順次さかのぼっていくことが大切です。司法書士に依頼して戸籍を収集する事も出来ますし、ご自分で郵送により取り寄せることも出来ます。
相続対策を考える中で大事なことは、相続税の申告業務をどの税理士さんに頼むのかということです。ご存知のように、年間約130万人近くの方が一年間で亡くなられています。相続税の申告をして納税している方が約12万人ですので、相続税の申告が必要な方は1割弱と言えます。税理士の先生の登録者数は、約8万人弱ですので、平均すると、ひとりあたり2件の相続税の申告はしていないことになります。つまり、法人税の申告や個人の確定申告のように、申告数が多くないので、相続税の申告件数の多い税理士の先生に依頼する事が、まず大切だと言えます。私が、相続トータルサポート関西として一緒にお仕事をしている税理士の先生は、資産税専門の税理士です。ここ数年は、年間で120件以上の相続税の申告を行っておられます。やはり、土地の評価や遺産分割の方法など、相続後、どのような形で遺産分割を行うかは、二次相続や所得税の税率に大きく影響しますので、どの税理士と一緒に相続手続き、相続税の申告を行うかは、非常に大切です。
ファイナンシャル・プランナーは、税務申告を行う事は出来ませんので、相続の相談を受けた時に、信頼して出来る資産税に強い先生をご紹介出来るネットワークを持っておくことは、大切です。
相続税の申告期限は10ヶ月です。相続税の申告期限までに相続税を納める必要があります。
相続人のあいだで、納得できる遺産分割協議、相続税の申告が行えるように、出来るだけ早く、遺産分割の話し合いを開始して、余裕をもって遺産分割協議を終えることを心がけましょう。遺産分割と並行して、納税資金についても確認が必要です。現預金が多い方は、納税資金の問題は少ないのですが、不動産の割合が多い方は納税資金が不足するため、必要に応じて不動産を売却しなければならないケースもあります。有価証券の売却と異なり、不動産の売却には、権利関係の調整、境界の確定、不動産価格の査定、媒介手続きと、時間がかかります。まとまった大きな土地になると、開発許可等の許認可等が必要になります。また、農地の場合には、生産緑地指定の解除、農地の転用手続き、開発許可の許認可と、売却まで1年以上必要な場合もありますので、時間軸から逆算して、事前に納税資金の確認や相続時に処分を考える不動産を整理して、事前に準備を進めておく事が、スムーズな相続手続につながります。
相続を経験している人は少ないですので、相談者の方は何から始めれば良いのか、どんな手
続きが必要なのかが分かっていない方が大半です。相続が発生してからのファイナンシャル・プランナーの役割は、わからない事があれば、いつでも相談することが出来きる信頼できる相談相手、手続の際に必要な税理士や司法書士の先生につなげてあげるコーディネーターの役割だと思っています。
もう一つは、時間軸のお話をさせていただいているのは、相続の発生は終わりではなくて、次の相続の始まりであるということです。相続というのは必ず発生しますので、次の相続を考えて遺産分割を行う。次の相続への対策を始めることが大切です。
金融資産が約1億円、相続人が配偶者と子供さんが3人のケースがありました。まだ配偶者の方が60代の方でしたので、相続の際には子供さんともお話をしていただき、今回の遺産分割協議については、全て配偶者の方が相続する形とし、相続税の申告を行いました。相続税は、配偶者控除がありますので、0円です。同時に、配偶者の方に生命保険の非課税枠の終身保険に加入いただき、毎年お子様に贈与をしていただくこと、お孫さんが進学される際には、教育費等の支援を行う事を提案させていただき、現在、贈与等を毎年行っておられます。
つまり、配偶者の方の年齢を考えて、その時間を有効に活用して、財産を少しずつお子様に移していくことを提案し、実践されています。
所有されている財産の内容、親子やごきょうだいの関係など、人それぞれ相続対策は異なります。きちんと正しい相続に対する知識を提案して、時間軸を活かした提案をしていただければと思います。
相続対策として大切なことは、この相続までの時間軸についてきちんと理解し、お客様がお元気な時に対策を始める事です。
相続税の申告までの時間に限りがある中で、いかに相続人の間できちんと話し合い、円満な相続を実現するために、ファイナンシャル・プランナーの役割は何かについて考えていただければと思います。相続の発生後に行うべき対策について理解する事で、生前に準備を行う事の大切さをお客様に伝えていただければと思います。相続において時間軸を頭においてコンサルティングを行うことができるファイナンシャル・プランナーの役割は非常に大きいと私は思っています。
ファイナンシャル・プランナーとして、相談や実務を行う中で、自分の引き出しを増やし、お客様にとって必要なネットワークを更に広げていきましょう。